油ヶ淵の汚れ
汚れの原因1 流入する汚れ
水が汚れるということは、水の中に含まれている”汚れの物質=汚濁負荷”の量が多いことを意味しています。まず、この”汚れの物質”がどこから来るのかを考えてみることが大切です。
私たちは暮らしの中で食事、手洗い、洗濯、入浴など、たくさんの水を使っています。生活が便利になるにつれて水の使用量も増えてきています。 「水を使う」ということは、ほとんどの場合何かを「洗い流す」ことなので、 使い終わった水にはいろいろな汚れが加わっています(生活系負荷)。
また、工場などで物を作るときにもたくさんの水が使われ、その過程でいろいろな汚れが加わっていきます(産業系負荷)。
畜産業でも同じくたくさんの水を使い、その過程でいろいろな汚れが加わっていきます。(畜産系負荷)
流域の都市化や工業化が進むと流域の中で発生する汚濁負荷量はどんどん増加していき、 使い終わった水をそのまま水路に流してしまうと、その先にある川や湖、海はどんどん汚れていってしまいます。
また、川や湖に流れこむ汚濁負荷は家庭や工場など特定できる場所から排出される汚れだけでなく、 雨が降った時、市街地や農地や山林などから雨水といっしょに流れでてくる汚れ(土地系負荷)も影響しています。
このように湖の水質が悪くなってしまう原因の一つは、流域のいたるところから様々な経路によって流れこむ汚濁負荷の量にあるのです。
では、油ヶ淵に流れ込んでいる汚濁負荷量は一体どれくらいあるのでしょうか?
平成21年度(2009)の流域から流入する汚濁負荷量の推定量を表したものが次のグラフです。
油ヶ淵流域から流入する汚濁負荷量(平成21年度(2009)) |
平成21年度(2009)に湖に流れ込んでいる汚れの量はCOD(化学的酸素要求量)で1年間に約1,316トンであり、1日に直せば3.6トンにもなります。
また、これらの汚れがいつ、どこから流れ出ているのかを見てみると、COD、T−N(全窒素含有量)、T−P(全りん含有量)ともに降雨時に流れ出る負荷量が2〜4割を占めていることがわかります。雨が降っていない時の通常時では家庭から排出される汚れが約5〜6割と最も多く、土地系や産業系がこれに次ぐ割合になっています。
このように、川や湖の汚れの物質は、家庭・工場・市街地・農地などから絶え間なく流れ出ています。だから、湖や川をきれいにしていくためには、これら多様な汚濁負荷を色々な方法を使ってできる限り減らしていくことが必要なのです。
しかし、これらの汚れは流域住民の皆さんの努力のおかげで、着実に減少してきています。
次のグラフは、平成12年度(2000)の流域から流入する汚濁負荷量の推定量を表したものです。平成12年度(2000)と平成21年度(2009)の汚れの量を比較してみましょう。
油ヶ淵流域から流入する汚濁負荷量(平成12年度(2000)) |
平成12年度(2000)のCODの総量が1年間で1,683トンに対し、平成21年度(2009)は1,316トンと約2割減少しています。また、T−N、T−Pも同じく約3割減少しています。このことから、油ヶ淵に流入する汚れの総量が全体的に減少しており、皆さんの油ヶ淵に対する水質浄化活動の効果が現れているといえるでしょう。
汚れの原因2 内部生産
川の水にはいつも「流れ」がありますが、湖の水はしばらく湖の中にとどまっていて(滞留) 、徐々に下流の川に流れ出ていきます。湖の中に流れこんできた汚れ(汚濁負荷)は、水が滞留している間に微生物に分解されながら少しずつ重みで沈殿していきます。
また、水の中の窒素やリンなどの汚濁物質(栄養塩類とも呼ばれます)は、植物プランクトンの栄養分になります。この栄養分が多くなり(富栄養化)、日射量が増えると、そこにすんでいる植物プランクトンが過度な増殖を始めます(生産)。この増殖したプランクトンは、食物連鎖で上位の生きものに食べられるものもありますが、量が多いと死んで沈殿し、新たな汚濁物質になっていきます。
これらの汚れが沈殿し堆積した泥の層「ヘドロ」からは、徐々に汚濁物質が溶け出してきます(溶出)。汚濁物質には窒素やリンも含まれており、それらを栄養源として、さらに多くの植物プランクトンが増殖していきます(生産)。
このように湖内では、汚れの原因物質が生産→沈殿→溶出→生産されるという悪循環がおこっていると考えられます。特に、油ヶ淵は、湖が持つ水の滞留時間が長いという特徴の他、水深が浅く水中への日射量が多いという特徴を持つため、この循環が促進されていると推測されます。
しかし、植物プランクトン自体は生態系でいうとエネルギーを生み出す生産者の役割を担っており、他の生物のエサとなったり、光合成により水中に酸素を供給している油ヶ淵の豊かな水環境をつくる上で必要な仲間です。
この植物プランクトンが過度に増えすぎないためにも、植物プランクトンにとっての栄養、つまり油ヶ淵に流れ込む汚れを減らすことが重要になります。
内部からの汚濁物質生産要因
- 湖水が滞留している時間が長い
- 水深が浅い(水中への日射量が多い)
- 流入や底泥からの溶出による窒素・リンの増加